2025.07.02

CFOが考えるべき「採用コストとROI」

1. はじめに

採用活動は企業の成長を左右する重要な投資のひとつですが、適切なコスト管理とROI(投資対効果)の最大化が求められます。特に、新卒採用は長期的な企業成長に直結するため、CFOがコストとリターンのバランスを正しく評価し、戦略的に管理することが重要です。

本記事では、新卒採用を強化したいCFOや経営者向けに、採用コストの最適化とROIを最大化する方法を、定量データを交えながら解説します。


2. 採用コストの内訳とベンチマーク

2-1. 一般的な新卒採用コストの内訳

コスト項目割合(全体の%)具体的な内容
採用広報費25%企業説明会、求人広告、採用サイト運営
採用エージェント手数料30%紹介会社への成功報酬(1人あたり100万円以上)
選考プロセス費用20%面接官の工数、適性検査、会場費用
内定者フォロー15%内定者研修、懇親会、オンボーディング準備
その他10%システム導入、採用コンサルティング

(出典:リクルート「新卒採用市場調査2023」)

2-2. 採用コストの業界別ベンチマーク

業界1人あたりの採用コスト(万円)3年後定着率
IT・ソフトウェア120〜15070%
コンサルティング100〜13065%
メーカー80〜10075%
サービス業60〜9050%

業界ごとの採用コストの違いを理解し、自社の適正コストを見極めることが重要です。


3. 採用ROIの算出方法

3-1. 採用ROIの計算式

採用ROI(投資対効果)は、以下の式で算出できます。

例えば、1人あたりの採用コストが100万円で、その人が年間で500万円の売上を生み出す場合:

つまり、投資対効果は400%となります。

3-2. 採用ROIの目標値

企業フェーズ目標ROI
スタートアップ200%〜300%
グロース企業300%〜500%
大企業500%以上

採用ROIを高めるには、採用コストを抑えるだけでなく、採用者の生産性向上や定着率の向上も重要です。


4. 採用コスト最適化のための戦略

4-1. 採用コスト削減の方法

施策効果
ダイレクトリクルーティングの活用採用エージェント費用の削減
採用プロセスの短縮面接・選考のコスト削減
オンライン説明会の活用会場費・移動費の削減

4-2. 採用の質を高める施策

施策効果
技術テスト・適性検査の導入ミスマッチの防止
インターンシップの強化事前にスキルと適性を確認
リファラル採用の推進採用成功率の向上

5. 採用後のROI向上施策

5-1. オンボーディングの最適化

施策期待される効果
メンター制度の導入早期離職率の低下(15%→5%)
入社前研修の実施業務適応スピードの向上
1年間のフォローアップ長期的な定着率の向上

5-2. 採用ROIを最大化するためのKPI設定

KPI目標値
3年後定着率80%以上
採用ROI300%以上
採用1人あたりの生産性500万円以上

これらのKPIを継続的にモニタリングし、採用戦略の改善を行うことが重要です。


6. まとめ

CFOが考えるべき「採用コストとROI」のポイントは以下の通りです。

  1. 採用コストの内訳を把握し、適正な予算を設定する
  2. 業界ベンチマークを参考に、自社の採用コストを最適化する
  3. 採用ROIを計算し、投資対効果を明確にする
  4. 採用プロセスを最適化し、コストを抑えながら採用の質を高める
  5. オンボーディングと定着施策を強化し、長期的な生産性向上を実現する

これらの施策を実行することで、採用活動の投資対効果を最大化し、企業の成長を支える強固な人材基盤を構築できます。