2025.06.20

「すぐ辞める新卒」を減らすためのオンボーディング設計

1. はじめに

新卒採用は企業の成長にとって不可欠ですが、せっかく採用した新卒が短期間で離職してしまうケースは多くの企業が直面する課題です。特に、近年の新卒の離職率は上昇傾向にあり、早期離職を防ぐためのオンボーディング(組織への適応支援)の重要性が高まっています。

本記事では、新卒採用を強化したい経営者向けに、新卒の早期離職を防ぐためのオンボーディング設計について、定量データを交えながら解説します。


2. 新卒の離職率の現状と課題

2-1. 新卒の早期離職率データ

年度3年以内離職率(全体)1年以内離職率
2018年30.4%12.1%
2019年31.2%12.8%
2020年32.1%13.5%
2021年33.5%14.2%
2022年34.8%15.1%

(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)

約3人に1人が3年以内に離職し、1年以内に辞める割合も増加傾向にあります。

2-2. 早期離職の主な理由

離職理由割合
仕事の内容が合わなかった35.7%
職場の人間関係に問題があった28.3%
労働条件(給与・残業)が合わなかった18.6%
企業の成長性・将来性に不安を感じた12.1%
研修や教育体制が不十分だった8.5%

適切なオンボーディングを設計することで、これらの課題を改善し、新卒の定着率を向上させることが可能です。


3. 効果的なオンボーディング設計のポイント

3-1. 入社前のフォローアップ

施策実施時期効果
内定者懇親会内定後〜入社前企業理解の促進、同期との交流促進
メンター制度導入内定後〜入社後先輩社員からのフォローアップ
事前学習プログラム入社前1〜3ヶ月基礎スキルの強化、即戦力化

3-2. 初期研修の充実

研修項目期間内容
ビジネスマナー研修1週間社会人基礎力の習得
企業理念・ビジョン研修1週間企業の価値観を共有
OJT(現場研修)3ヶ月〜6ヶ月実務経験を通じた学習

OJTを充実させることで、新卒が「実務のイメージがつかないまま不安を抱えて辞める」ことを防ぎます。

3-3. 1年間のフォローアップ体制

期間フォロー施策
入社3ヶ月定期フィードバック面談
入社6ヶ月キャリア面談、成長度チェック
入社12ヶ月次年度の目標設定・モチベーション維持

継続的なフォローアップを行うことで、新卒の不安を軽減し、モチベーションを維持することができます。


4. 新卒の定着率向上のための施策

4-1. キャリアパスの明確化

キャリアステージ目標設定
入社1年目基本業務の習得、適応力の向上
入社3年目専門スキルの獲得、リーダーシップ経験
入社5年目チームリーダー、マネージャー候補

明確なキャリアパスを提示することで、新卒が将来をイメージしやすくなり、離職率の低下につながります。

4-2. 組織文化の強化

施策効果
社内交流イベント部署を超えた関係構築
フィードバック文化の醸成上司・同僚からの建設的な意見交換
柔軟な働き方の導入ワークライフバランスの向上

職場環境を整えることで、離職の大きな要因である「人間関係の問題」を軽減できます。

4-3. 給与・待遇の見直し

項目市場平均競争力のある水準
初任給23万〜27万円25万〜30万円
昇給頻度年1回年2回
福利厚生一般的な社会保険住宅手当、書籍購入補助

給与や待遇を市場水準以上に設定することで、新卒のモチベーションを高め、定着率を向上させることができます。


5. まとめ

「すぐ辞める新卒」を減らすためのオンボーディング設計には、以下のポイントが重要です。

  1. 入社前からのフォローを強化し、新卒の不安を軽減する
  2. 初期研修を充実させ、業務適応力を高める
  3. 1年間の継続的なフォローアップで定着率を向上させる
  4. キャリアパスを明確化し、長期的な成長のビジョンを提示する
  5. 組織文化の強化と給与・待遇の適正化を進める

これらの施策を実行することで、新卒の早期離職を防ぎ、企業の成長につなげることができます。