2025.05.18
新卒の報酬設計で競争力を高めるための3つの工夫

1. はじめに
近年、新卒採用市場の競争が激化する中で、単に高い給与を提示するだけでは優秀な人材の確保は難しくなっています。特にベンチャー企業においては、大手企業と同じ条件で戦うのは現実的ではないため、報酬設計において独自の工夫をする必要があります。
本記事では、新卒採用を強化しようと考えている経営者向けに、「新卒の報酬設計で競争力を高めるための3つの工夫」を定量データとともに解説します。
2. 工夫①:基本給与+インセンティブの組み合わせ
2-1. 日本国内の新卒給与の相場
まず、新卒市場における基本給与の相場を見てみましょう。
企業規模 | 平均初任給(学部卒) | 平均初任給(修士卒) |
大手企業 | 23万〜27万円 | 25万〜30万円 |
中堅企業 | 22万〜25万円 | 24万〜28万円 |
ベンチャー企業 | 20万〜25万円 | 22万〜27万円 |
※参考データ:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
ベンチャー企業は、大手企業に比べて初任給の水準が低めですが、基本給与にインセンティブを組み合わせることで、より競争力のある報酬設計が可能になります。
2-2. 成果に応じたインセンティブ設計
インセンティブ制度を導入することで、企業側は固定コストを抑えながらも、高い成果を上げる人材に報いることができます。以下のようなインセンティブを組み合わせると効果的です。
- 営業職向けインセンティブ:成果に応じた売上歩合制(例:売上の5〜10%をボーナスとして支給)
- エンジニア職向けインセンティブ:プロジェクト成功報酬(例:新規機能リリースごとに10万円支給)
- 全職種共通の成果報酬:OKR達成に応じたボーナス支給(例:目標達成率80%以上で基本給の10%を支給)
こうした工夫を取り入れることで、給与だけではなく「頑張れば稼げる環境」を提供できます。
3. 工夫②:ストックオプションで長期的な報酬を設計
3-1. ストックオプションの導入企業の割合
企業規模 | ストックオプション導入率 |
上場企業 | 70%以上 |
未上場ベンチャー(レイター期) | 50%以上 |
未上場ベンチャー(アーリー期) | 30%前後 |
ストックオプションは、特に資金力の限られたベンチャー企業において、給与競争力を補う有効な手段です。
3-2. ストックオプションの活用事例
- 3年後に行使可能なオプションを付与し、長期的なリテンションを促す
- 業績連動で追加付与することでモチベーション向上を図る
- 一定の成長を達成した際に報酬として支給する(例:企業価値が100億円を超えた際に行使可能なオプションを追加付与)
これにより、短期的な給与競争に巻き込まれず、長期的に優秀な人材を確保することができます。
4. 工夫③:キャリア成長の機会を報酬として提示
4-1. 昇給スピードの違い
企業規模 | 平均昇給率(年) |
大手企業 | 3〜5% |
ベンチャー企業 | 5〜15% |
ベンチャー企業では、成果に応じたスピーディーな昇給が可能です。「◯年目で△万円の給与へ昇給」という具体的なキャリアパスを提示することで、新卒にとって魅力的なオファーになります。
4-2. 裁量権と成長環境のアピール
給与やインセンティブだけでなく、「成長できる環境」を提供することが、ベンチャー企業にとって重要な差別化ポイントとなります。
具体的な成長機会の提示例
- 入社1年目からプロジェクトリーダーに抜擢
- 経営陣と直接コミュニケーションできる環境
- 新規事業の立ち上げを経験できるチャンス
これにより、新卒が「この会社で成長したい」と思える要素を提供することが可能になります。
5. まとめ
新卒採用において競争力のある報酬設計をするためには、以下の3つの工夫を取り入れることが重要です。
- 基本給与+インセンティブの組み合わせ(固定コストを抑えつつ、高成果者に報いる)
- ストックオプションの活用(短期的な給与競争に巻き込まれず、長期的なリテンションを促す)
- キャリア成長の機会を報酬として提示(昇給スピードや裁量権をアピール)
これらの施策を適切に組み合わせることで、大手企業に対抗しながらも、ベンチャーならではの魅力を打ち出すことができます。
特に、給与の額面だけにこだわるのではなく、「働くことで得られる成長」や「将来の報酬の可能性」をしっかり伝えることが、優秀な新卒を採用するための鍵となるでしょう。